後妻・連れ子への相続

被相続人と前妻の間に子どもがいる場合、後妻やその子どもと面識がないため、連絡が行き届かないというような問題がよくあります。前妻の子どもの知らないうちに遺産分割協議が進められ、手続きが終わっていたというようなケースも少なからずあります。面識がないからと連絡を怠ると、後々大きなトラブルに発展する可能性もあります。

適切な遺産分割を行うためには、「前妻の子ども」と「後妻、その子ども」が法律ではどのような権利関係があるのかをよく知ることが大切です。

ここでは、被相続人の前妻の子どもと後妻における相続の関係性や、よくあるトラブルについて解説します。

この記事の内容

前妻の子、後妻の子の相続分

被相続人の実子である前妻の子どもと後妻の子どもの法定相続分は、どちらも1/2です。

前妻の子どもがいくら疎遠であっても実子である以上、後妻やその子どもから一方的な相続放棄を求めたり、相続分を減らすということはできません。前妻の子どもには、法律上守られている最低限の相続財産を受け取る権利(遺留分)があります。

前妻の子どもと後妻間でよくあるトラブルに「一方的に相続放棄を求められた」「突然遺産分割協議書が送られてきた」というものがありますが、こうしたトラブルは法制度を無視した結果起きるものです。

対して、後妻の子どもに関しては被相続人と血縁関係があるかどうかによって相続分は異なってきます。

後妻の子は血縁関係がポイント

後妻の子どもは被相続人の実子であれば特に問題はありませんが、後妻の連れ子の場合は「養子縁組をしているかどうか」が大きなポイントとなります。養子縁組をしていれば、実子と同様に相続財産を受け取ることができます。

養子縁組をしていない場合は、どれだけ長い間同居していたとしても連れ子には相続権はありません。

連れ子に相続権を与える養子縁組

後妻の連れ子には相続権はありません。連れ子に相続権を与えるためには、被相続人が生きている間に養子縁組を行う必要があります。養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がありますが、連れ子再婚のケースはほとんどの場合「普通養子縁組」です。普通養子縁組を行うと、実親と養親両方と親子関係を維持することができるため、実親と養親両方の相続権を得ることができます。

前妻の子/後妻の子でよくあるトラブル

当事務所では、被相続人の前妻の子や後妻の子に関する相続でよくお受けするトラブルとして、次に挙げる事案があります。これらのトラブルも、弁護士が対応することで解決の糸口を見出せることがあります。

後妻やその子どもから一方的に相続放棄、遺産分割協議書への合意を求められた

後妻の子どもから「相続放棄をしてほしい」と要求があっても応じる必要はありません。しかし、こうした場合には相続財産の状況がどのようになっているのかの提示がなく、開示されていてもその内容に不安が残ります。そのため、ご自身で財産調査を行い、そのうえで相続放棄をするか、相続を求めて協議や裁判手続きをとるかを判断する必要があります。なお、生前に相続放棄をすることは法律上できません。

また、遺産分割協議に関しても、明らかに不利な内容での遺産分割協議書への合意を求められていたら即断せず、この場合もしっかり財産調査を行うなどしてから判断するようにすべきです。

知らない間に後妻とその子どもたちの間で遺産分割されていた

一部の相続人だけで行われた遺産分割協議は無効です。したがって、知らない間に勝手に後妻や後妻の子が行った遺産分割も無効となります。まったく相続させてもらえなかったような場合には、遺留分(法律上守られている最低限の相続財産を受け取る権利)を主張して相続できる可能性があります。

後妻とその子どもの行動が、他に相続人がいると知っていながら、わざと除外して協議を行ったというような悪意を感じるケースであれば、協議での交渉成立は難しく、調停や審判(裁判)で遺産分割を求めていくことが望ましいでしょう。

遺言に「前妻の子どもには相続させない」と書かれていた

遺言書に「前妻の子どもには相続を一切させない」というような内容が書かれていても、前妻の子どもを相続から除外することはできません。前妻の子どもは遺留分(法律上守られている最低限の相続財産を受け取る権利)を主張することができます。では、遺留分を放棄させることはできるのでしょうか。法律上、一方的に遺留分の放棄をさせることはできないので、後妻側の都合で遺産分割手続きを進めることは難しいです。しかし、遺言によって、前妻の子どもに対して遺留分程度の相続分に収めることは可能です。

この記事の監修

谷 靖介

Yasuyuki Tani

  • 代表弁護士
  • 東京法律事務所
  • 東京弁護士会所属

遺産分割協議や遺留分に関するトラブル、被相続人の預貯金使い込みや遺言内容の無効主張など、相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っている。

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