遺産隠し

被相続人の預貯金や財産を特定の相続人が使い込んでいる形跡や疑念を感じたとき、遺産隠しが疑われる状況が見受けられた場合、怪しいと不信感をもった段階で話し合ってもまとまりにくく、モヤモヤとした気持ちが続くだけとなってしまいます。漏れのない財産調査を行って事実を明らかにし、早い段階で親族への不信感を解消するにはきちんと調査をし、結果を出すことが重要になります。

ここでは、相続財産が使い込まれている、遺産が隠されている場合の対応などについて解説いたします。

他の相続人に遺産隠しや使い込みの疑いがある場合

他の相続人によって財産が隠されていたり使い込みの疑いがあるといったご相談は、当事務所でもよくお聞きします。

具体的な対応方法としては、まず疑いのある相続人に財産の開示を求めるのが通常です。しかし、こういった疑いがある場合、被相続人の生前から既に相続人同士の関係性が希薄であることも多く、相続財産の管理をしている相続人が財産の開示に積極的でない状況が多々あります。そのため、被相続人の預金口座の取引明細を取り寄せるなどして不審なお金の動きがないか、財産調査をすることが必要となります。

相続財産を調べる

具体的に財産を調査するには、まず何から手を付けることがよいのでしょうか。相続財産が一定以上ある場合には「相続税の申告」が必要となります。相続人全員が行う必要があるため、相続税申告書の内容を確認することで、おおよその相続財産を知る手助けとなります。また、被相続人の預金口座については、金融機関ごとに残高証明書(名寄せ)を取得することになりますが、配偶者でもない限りすべての金融機関を把握するのは難しいので、実際には被相続人の居住地近くにある銀行に一つひとつ照会をかけることになります。

また、意外と忘れがちですが、生命保険契約やマイナスの財産(借金)についても必ず確認しましょう。漏れなくすべての財産を個人の力で確認するのは大変な労力が必要となるため、弁護士などにご相談されることをおすすめします。

財産取り込み、遺産隠しが発覚した際の対応方法

被相続人の遺産隠し等が発覚した場合、どのように対応するべきか、発覚したタイミングによって対応方法が変わってきます。ここでは、状況に応じた対応について解説します。

遺産分割協議・調停・審判(裁判)中に発覚した場合

遺産分割の各手続きの途中で、他の相続人などによる遺産隠しが発覚した場合は、遺産分割の対象財産として分割をすることになります。

遺産隠しは発覚しても、その相続人を刑事罰に問うことは難しいのが現状です。遺産隠しのうえ使い込んでいたとしても、親族間の問題に警察が介入することはほとんどありません。そのため、こうした事実が発覚した場合には、弁護士を入れて徹底的に財産調査を行うことが重要です。

遺産分割後に発覚した場合

遺産分割の手続きが終わった後に新たな相続財産が見つかった場合でも、原則として各手続きは有効なものとして扱われます。そして、新たな相続財産について改めて遺産分割協議を行うことになります。しかし、新たに見つかった相続財産が他の相続人が隠していたものだったり、相続財産全体の中で大きな要素を占める場合などは例外として、過去の遺産分割は無効となり、もう一度遺産分割手続きをやり直す場合があります。

全員の合意が取れている場合は、新たに発覚した相続財産についてのみ協議することができます。遺産分割の手続きをもう一度最初から始めるのは大変ですので、遺産分割協議書にあらかじめ「新たに発覚した相続財産はその都度協議する」という旨の条項を入れておくのもよいでしょう。

遺産隠し・相続財産の使い込みでよくあるトラブル

当事務所では、相続財産の使い込みや使途不明金の発覚でよくお受けするトラブルとして、次に挙げる事案があります。これらのトラブルも、弁護士が対応することで解決の糸口を見出せることがあります。

財産を使い込んだ相続人の責任を追及したい

相続人の1人が被相続人の預金を引き出し、その使途がわからないもしくは理解できないものを「使途不明金」といいます。問題となっている口座の使途不明金と思われる取り引きを特定し、その口座を管理していた相続人に問いただすことになります。相続直前もしくは直後に多額が引き出されていた場合はわかりやすいですが、その相続人が管理していた全期間中に引き出した金額について追及する場合には、多くの作業と専門的な知識が必要となりますので、弁護士に相談することをおすすめします。

財産隠し、使い込みを疑われている

財産の使い込みを疑われた場合、問題となっている口座の預金取引部分を指摘してもらい、合理的に説明していくことになります。疑っている相手のよくある主張として「本当はもっとあったはず」という抽象的なものがありますが、裁判所では抽象的な主張は通りません。そのため、具体的な取り引き内容について調停や審判の場で明らかにしていくことになります。